16 May, 2011

インターネットを使う人が知っておくべきこれからのインターネットがもつ秘密








今回はTED動画の紹介。正直言って今まで見てきたTED動画の中で最も感銘を受けました。
是非、みなさんに見ていただきたい!(Redditなんかでも相当バズってる模様。)

紹介に入る前にいくつか前置き。

僕はインターネットが好きです。インターネットは情報を繋げ、世界を繋げ、人を繋げてくれる素晴らしい技術だと思っており、そんな技術がこれからさらなる進化を遂げ、どのようなインパクトを社会に与えるのかに非常に興味があります。

そんなインターネットの最近の大きな流れに、"Personalization(個別化)"というのがあります。
これはつまりGoogleで言えば、その人に最適な検索結果を出すことであり、Youtubeで言えばその人の好みに合った動画をサジェストしてくれることであり、Facebookであればその人が仲の良い人の情報を優先的に表示してくれること。

いつの時代にも処理しきれない情報に悩まされる私たちにとってようやく技術的に可能になった手法であり、長らく待ちわびた手法でもあります。(そして、それをやる側はそうすることによってクリック率や滞在時間が上がり、よりビジネスとしての価値が高まる)

そんな”Personalization”の弊害について警鐘を鳴らしているのが今回のTED動画です。(残念ながら日本語字幕がないので動画下にて要約しました。)スピーカーは『The Filter Bubble: What the Internet Is Hiding from You』を出版したEli Pariser(@elipariser )。



・(Facebookファウンダー)Mark Zuckerburgは『あるユーザーにとってはアフリカで人が死んだことより家の玄関でリスが死にかけていることの方がもっと関心をひく事件だということはあり得る。』とあるインタビューで答えた。そのような思想に則った今日のインターネットとはどのようなものだろうか。

・(その前に)そのようなサービス以前のインターネットは、まさしく世界との繋がりを感じる場であったし、民主主義や社会にとって素晴らしいものであると思っていた。

・しかし、そのような情報の流れはいつの間にか変わってしまっている。

・その変化に気づいておかないと、それはきっと問題になる。

・(私が)そのことに最初に気づいたのはFacebookを見ていたとき。(私は)政治的にはとても進歩的な意見を好む。でもだからといって保守的な人を避けてきたわけではなかった。彼らの意見を聞くのも非常に好きだったし、彼らが(Facebookに)投稿するリンク(情報)も好きだった。とても勉強になるしね。

・だからあることに気づいたときとても驚いたんだ。(私の)Facebookフィードに保守的な友人の投稿が流れなくなっていた。

・真相は次のようなもの。Facebookは私がどのリンクをよくクリックするかを見ていて、そして気づいた。”このユーザーは保守的な友人よりも進歩的な友人の投稿するリンクをよくクリックする”、と。そしてFacebookは私に相談することなく、保守的な友人による投稿が表示されないようにした。

・そして、このようなことをやっているのはFacebookだけではない。Google, Yahoo News, New York Timesなどはみな表示させる検索結果、ニュースの順番をそのユーザーの好みに合わせ、カスタマイズしている。この世の誰に大しても同じ検索結果を表示させるGoogleはもはや存在しない。

・この結果として、インターネットは急速に”あなたが見たいだろう”とインターネットが考えるものをあなたに見せるようになっており、そしてそれは必ずしも”あなたが見なければならない”ものではない。

・このような”Personalization”の技術に取り囲まれて生活するようになると、あなたは正に私が”Filter Bubble”と呼ぶものに囲まれることになる。

・”Filter Bubble”の形はそれぞれのユーザーによって異なっており、その決定権はあなたにはない。そしてより重要なことはそれがどんな情報をはじき出しているのかあなたにはわからない。

・私たちは皆(アフガニスタンに興味がある)勤勉な自己と(Justine Bieberが好きな)怠惰な自己を内面に抱えており、普段からそのバランスをうまくとりながら生活しているが、この”Filter Bubble”はそのようなバランスをあなたがいつも最初にクリックするのはJustine Bieberだから、と崩そうとしてくる。そして、気づいたときにゴシップや音楽ばかりに囲まれ、バランスのよい情報収集ができなくなってしまう。

・インターネットは情報を過去に存在した統制から開放し、自由にしたにも関わらず、近年のインターネットは新たに強力なアルゴリズムという技術が情報を統制し始めている。そして、そのアルゴリズムに過去の情報統制にあったように倫理はない。

・だからこそ私たちはこれからインターネットを使うに当たっては、関連性だけでなく、重要度や難易度の高いものや異なる見方を与えてくれるものを見せてくれているかを確認しなければならない。

・過去、戦時期の情報統制からジャーナリズムがそのような倫理を手に入れたように、これからそのアルゴリズムにもそのような倫理をプログラムしていかなければならない。

・これからのインターネットはしっかりとした倫理やルールやフィルターについての透明性、そしてユーザーへの選択権を与えるものでならない。

・なぜなら、インターネットは新しいアイデアや人々、異なる見方を世界と繋ぐものであってほしいから。

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個人的には前半部分は、おぼろげながら考えていたりしたことを見事に表現されていて、これこれ!という感じたのですが、後半部分は非常に高度でなるほどと頷きっぱなしでした。

ちなみに、後半部分の指摘は既に具体的なアクションが起こってきており、Oxford Universityなどはコンピューター・サイエンスと哲学を組み合わせたコースなどを既に組み始めています。
Oxford to Offer Joint Computer Science and Philosophy Degree - Here's How to Play Along at Home

これからのインターネットがどのようなものになるか楽しみつつ、利用者としてもしっかりと考えを持っておきたいところ。

Kenichi Nishimura (@nike1125)をフォロー
※こちらの記事はTMHポータル(http://www.tribalmedia.co.jp/blog/)の方にも転載いただいております!
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